Cauchy列と収束列
はじめまして
はじめまして,けろりんです.
アウトプットの練習の場としてブログを始めさせていただきます.
数学の"お気持ち"を理解したい大学生です.最近の興味は力学系,可換環論などです.
Cauchy列と収束列
それでは本題に入ります.大学1回生の時の微分積分学の講義においてこんなことを習いました.
Cauchy列ならば収束列である.
これ,実は一般的には成り立たないんです.一般的に成り立つのは
収束列ならばCauchy列である.
だけなんです.それではまずは2つの定義から見ていきましょう.
数列が以下を満たすときCauchy列であるという.*1
数列が以下を満たすとき数列はに収束するといい,この数列は収束列であるという.
おなじみの定義ですね.では収束列ならばCauchy列を(ほぼ明らかではありますが)示していきたいと思います.
収束列Cauchy列
収束列ということで
が成立します.このに対してとなるようなを任意に取ると
が成立,これは数列がCauchy列になっていることを示しています.
Cauchy列収束列
これは一般には成り立たないと言いましたが,その違いを表すキーワードが完備性です.完備性を持つ空間上の数列についてはCauchy列収束列が成立します.もちろん実数は完備性を持ちます.微分積分学のはじめの講義でDedekindの公理,Cantorの区間縮小法,Weierstrassの定理などをやりますが,これらは全て実数に完備性*2を公理的に与える作業だったのです.(実数というのは完備性を持つもの,というのを前提にしてこれから議論を進めますよ~~,という意味です.)
つまりこれが成り立たない例を見るには,完備性を無くしてやればいいのです.ということで少しだけ"セカイを狭めて"やりましょう.これからは有理数上の数列を考えることにします.
有理数上の数列について各々の項を以下のように定めることにします.
これらの数列の各項は有理数の値を取ります.お察しの通りこの数列はに収束する……と言いたいところなのですが,今の"セカイ"は有理数,なんて数は知らないわけです.収束の定義のところに明示はしていなかったのですが,数列の項と収束先のいる"セカイ"は一緒でなくてはなりません.ですので,この数列は"有理数の範囲内では"収束しないといえます.これがCauchy列であることはまあ明らかでしょうから,これで"Cauchy列ならば収束列"の反例を挙げることができました.*3
おわりに
完備 is 偉大,ということが伝わったのであれば幸いです.
解釈/記述の間違っている点,記述の分かりにくい点,その他ご意見などございましたら,お手数ですがご指摘の方よろしくお願いいたします.
最後までお読みいただきありがとうございました.